私たちバリューマネジメントグループが直営する結婚式場の1つ、「神戸迎賓館 旧西尾邸」があるのは、神戸の須磨。
そう、関西屈指の海水浴場、須磨ビーチのあるところです。
ビーチといえば、バーベキューですよね。そこでこの会場では、夏恒例のイベントとして、サマーバイキングを開催しています。
これは、一般のお客様が利用できるレストランを併設しているからできること。
サマーバイキングは毎夏、たくさんの家族連れで賑わいます。
ところで、イベントを手がける際に私たちが大事にしているのは、お客様に楽しんでいただくためのコンセプト作りです。
スタッフ全員で企画を出し合った結果、今年のサマーバイキングのテーマは「大正時代」に決定いたしました!
サマーバイキングのテーマが「大正時代」?ちょっと不思議に思われることでしょう。
その理由の1つは、この会場が建てられたのが大正8年であること。
旧西尾邸の三代目当主のお力も借りて、100年前の洋食が復刻できるからです。
では、洋食の文化をさかのぼってみましょう!
明治維新を経て大正時代になると、西洋料理店が人気を博し、「精養軒」「中央亭」「東洋軒」といった名店が次々とオープン、支店も増やしていきます。
また、この頃にはもう庶民の間にも洋食が定着し、比較的リーズナブルな価格で食べられる店も登場。
というのも、明治時代の後半にはすでにカフェブームが訪れていて、西洋式の食事や喫茶は庶民にとって身近になっていたからです。
ここ神戸でも、1923年(大正12年)に、外国船のコックをしていた伊藤寛が、洋食屋「伊藤グリル」を開業しています。
当時、庶民の間ではこんな言葉もあったそうです。「ソースをかければ何でも洋食」!
現に大阪ではこの頃、野菜を小麦粉や卵の生地と合わせて焼いた、今のお好み焼きの原型ともいえる料理が生まれ、「一銭洋食」と呼ばれていました。
ウスターソースをかけて食べる洋食のスタイルも、関西を中心に流行したようです。
ちなみに、日本におけるウスターソースの発祥地は関西なんですよ。
日本最古のソースメーカー「阪神ソース」が創業したのは1885年(明治18年)の神戸、
日本で最初にウスターソースを製造した「山城屋(現・イカリソース)」の創業は1896年(明治29年)の大阪です。
このように、西洋料理が庶民の間に広がったルートを探ってゆくと、明治時代初期、日本海軍の軍用食にもたどり着きます。
海軍の食堂のメニューはすべて洋食に定められていて、しかも軍用食なので、上流階級のための洋食ではなく、
一般的な食事として発展したことが、大衆に広まった理由といえるでしょう。
海軍の食事、その代表的なものがコロッケやカレーです。
コロッケは元々、「クロケット」というフランス料理の名前がなまったもので、魚介とクリームを混ぜ合わせたり、
肉のミンチを使ったり、ジャガイモを使ったりと、さまざまなバリエーションがありました。
高級フランス料理店では、肉や魚介をベシャメルソースで合わせたものをパン粉で包んでオーブンで焼いたり、油で揚げたものが主流でした。
そんなクロケットのなかでも、安くて保存のきくジャガイモを使ったレシピが軍用食に採用されたのです。
カレーも同じく、大量調理しやすい点が評価され、しかも手に入りやすい日本の食材を代用して、独自のカレーとして進化していくのです。
洋食の文化は実に奥が深く、また、神戸という土地とも歴史的につながっています。
また、食の文化、地域の文化を継承することは、料理人の使命だと感じています。
早速、コロッケやカレー、ビーフシチューといった、復刻洋食の試作と試食を始めました。
100年前に建てられた会場で、昔ながらの味を楽しみ、時代に思いを馳せるーー神戸迎賓館は、食の文化を未来へつなぐ場所でありたいと願っています。